3.25 消化管障害における栄養療法の戦略 —— 消化性潰瘍、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群への対応と再発予防
2026.01.16
⑴ 消化器疾患と栄養の相互作用
胃や腸の疾患、特に消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)、潰瘍性大腸炎(UC)※下記画像、クローン病(CD)、過敏性腸症候群(IBS)などの消化管障害では、炎症やバリア機能の破綻が主な病態となっています。
これらの疾患では、腸管の透過性亢進(リーキーガット)や腸内細菌叢の異常(ディスバイオシス)がしばしば認められ、食事内容や栄養状態の影響を強く受けることがわかっています。[1]
とくに、グルテン、カゼイン、精製糖、トランス脂肪酸、アルコールなどは腸粘膜を刺激し、炎症や腸漏れ(リーキーガット)を悪化させる可能性があります。
一方、ビタミンA、C、E、亜鉛、グルタミン、必須脂肪酸(EPA、DHA)などは粘膜修復や抗炎症作用を示すことから、積極的に取り入れるべき栄養素とされています。[2・3]

3d rendered illustration of colitis ulcerosa
⑵ 栄養療法の実際:基礎から応用へ
消化管障害に対する栄養療法の実際的なアプローチは、以下の5段階に整理できます。
① 炎症・刺激因子の除去(elimination)
• グルテン、カゼイン、FODMAP(発酵性糖質)、食品添加物、アルコール、カフェインなど、個別の刺激因子を除去します。
• つまりファストフードなどの超加工食品を排除します。
② 腸内細菌叢の正常化(balance)
• プロバイオティクス、プレバイオティクス、食物繊維、発酵食品の導入。
• 必要に応じてSIBO(小腸内細菌異常増殖)の治療も行います。
③ バリア機能の修復(repair)
• グルタミン、亜鉛、N–アセチルグルコサミン、ビタミンA・D、γ–オリザノールなどを活用し、腸管上皮の再生を促します。
④ 炎症のコントロール(modulation)
• オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)、フラボノイド、カテキン、クルクミン、ピクノジェノールなどの抗炎症・抗酸化物質を利用します。
⑤ 全身調整と再発予防(maintenance)
• ビタミン・ミネラルの最適化、ストレスケア、睡眠改善、運動、腸脳相関への対応など、全身的なケアを行います。[4・5]

Krill oil omega 3 capsules, Antarctic krill, Euphausia superba
⑶ 機能性食品・栄養素の例
以下は、消化管障害に対して効果が示唆されている機能性成分の一例です。
グルタミン: 腸粘膜修復、免疫細胞のエネルギー源
亜鉛: 粘膜再生、抗酸化、防御タンパク質の合成
ビタミンA・D: 粘膜上皮の分化、免疫調整
N–アセチルグルコサミン: 粘液層保護、リーキーガット改善
クルクミン: 炎症抑制、NF–κB阻害
オメガ3脂肪酸: 抗炎症作用、エイコサノイドのバランス調整
プロバイオティクス: 腸内細菌叢改善、バリア強化
これらの成分は単独でも効果がありますが、症状や検査値に応じた組み合わせやタイミングの最適化が鍵となります。

References
- Bischoff, S. C., et al. (2014). “Intestinal permeability–a new target for disease prevention and therapy.” BMC Gastroenterology, 14, 189.
- Akobeng, A. K., & Thomas, A. G. (2007). “Enteral nutritional therapy for maintenance of remission in Crohn’s disease.” Cochrane Database Syst Rev, (3), CD005984.
- Martinsen, T. C., et al. (2005). “The role of pepsin and other proteolytic enzymes in the development of gastric ulcer.” Scandinavian Journal of Gastroenterology, 40(10), 887–893.
- DeMeo, M. T., et al. (2002). “Intestinal permeability defect in irritable bowel syndrome: a pilot study.” Neurogastroenterology & Motility, 14(6), 669–675.
- Weir, T. L., & Manter, D. K. (2016). “The Plant Microbiome: From Ecology to Reductionism and Beyond.” Annual Review of Microbiology, 70, 129–147.