6. 小腸および大腸
2026.03.13
目次
1. 人類の進化と「咀嚼」の役割
人類の祖先にとって「栄養」とは、生きたままの食物を丸ごと食べることを意味していました。
そのため、食事のたびに時間をかけてしっかりと咀嚼し、唾液と混ぜ合わせることが必要でした。
しかし、現代の精製された食品や加工食品は、咀嚼をほとんど必要とせず、唾液との混合も不十分なまま胃に送られてしまいます。
特に砂糖のような単純糖質は、全く咀嚼せずに摂取されることが多く、これが消化管の機能に悪影響を及ぼす原因の一つとされています。[1]

2. 精製食品が胃腸に与える物理的・化学的負担
食物繊維が豊富な自然食品は、咀嚼回数が多くなることで唾液分泌を促進し、消化管への負担を軽減します。
一方で、精製食品は胃内でかさが少なく、物理的刺激が乏しいため、胃の拡張が不十分となり、胃食道逆流症(GERD)や機能性ディスペプシアの一因になると考えられています。[2]
また、砂糖は高い浸透圧を持ち、胃内の内容液の浸透圧を急激に上昇させ、胃の排出を遅延させることが確認されています。[3]
3. 食物繊維による整腸作用とデトックス機能
食物繊維の摂取は、便のかさを増やし、腸管の蠕動運動を正常化することが知られており、慢性的な便秘の予防に有効です。
例えば、小麦ふすまや米糠は穏やかな作用をもつ自然な緩下剤として古くから利用されてきました。[4]
「硬いものを食べると柔らかく出る、柔らかいものを食べると硬く出る」という表現は、腸内容の性質と排便の状態の関係をうまく表現しています。
糖質が多く繊維が少ない現代の食品は、腸の通過時間を長引かせ、発ガン物質の生成と腸壁への接触時間を増加させることになります。[5]
さらに、食物繊維は腸内細菌の発酵基質となり、短鎖脂肪酸(SCFA)などの有益な代謝産物を生み出します。
これらは腸粘膜の修復や炎症抑制に寄与し、腸内環境を整える重要な要素です。[6]
食物繊維はまた、胆汁酸やカドミウムなどの有害金属を吸着し、排出する機能も持っています。[7]
アルツハイマー病やパーキンソン病などの認知症が心配な方にとって、生菜食(サラダなど)は、重要な食習慣ですね。

4. 腸内細菌叢(マイクロバイオーム)と免疫の要
腸内細菌叢(マイクロバイオーム)は、消化・吸収・免疫・神経系など多方面に影響を及ぼす共生的存在です。
抗生物質の使用や感染症によりこのバランスが崩れると、激しい下痢や慢性的な消化障害を引き起こすことがあります。[8]
近年、虫垂は善玉菌のリザーバー(貯蔵庫)としての機能を持ち、腸内細菌叢の再構築に寄与していることが報告されています。[9]
5. 食物繊維不足が招く循環器・ガンのリスク
食物繊維が不足すると、蠕動運動が低下し、結腸内に便が停滞します。
これにより静脈還流が妨げられ、痔や静脈瘤が生じやすくなります。
また、便の滞留時間が長くなると胆汁酸の再吸収が過剰となり、発ガンリスクが上昇します。[10]
特に大腸ガンの発生率が高い北米諸国では、食物繊維の摂取量の少なさが主因の一つとされ、繊維摂取量の多い人々ではそのリスクが著しく低いことが報告されています。[11]

6. 食物アレルギーと腸の過敏性
腸の機能障害における第二の重要因子は、食物アレルギーです。
アレルギーを起こす食品が腸内に入ると、過剰な蠕動運動や分泌が誘発され、下痢や便秘を交互に繰り返す症状が見られることがあります。[12]
牛乳や小麦などの一般的食品が原因であることも多く、これにより腸粘膜が浮腫状になり、腸過敏症状を呈することがあります。[13]
このような場合にも、食物繊維を含む食事は症状の安定化に有用とされています。
7. 文明病としての大腸憩室症
大腸憩室症は、精製糖質を多く含み食物繊維が不足した食生活と強く関連しています。
19世紀末にはほとんど見られなかった疾患ですが、20世紀初頭から急増し、現在では高齢者の3分の2に認められます。
一方、伝統的な食生活を守る発展途上国では極めて稀です。[14]
第二次世界大戦中の欧州では、精製糖の供給が制限され、全粒粉の使用が増加したため、大腸憩室症の発症率が一時的に減少したという記録もあります。[15]
かつて憩室症の治療には「刺激の少ない柔らかい食事」が推奨されてきましたが、実際には食物繊維が不足していたことが病態の悪化を招いていた可能性があります。
近年では、繊維摂取によって腸管内容物の体積を増やし、蠕動運動を助けることが症状改善に有効であるとされます。[16]
8. 西洋型食生活と炎症性疾患の増加
大腸ガンや直腸ガンもまた、糖質過多かつ繊維不足の西洋型食生活と強く関係しています。
米国では毎年7万人以上の新規症例が報告されており、先進国において主要なガン死因の一つです。[17]
食物繊維の摂取量が多く、腸の通過時間が短い人では、発ガン物質の腸管内滞留時間が短縮され、リスクの軽減に寄与することが明らかになっています。[18]
潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患(IBD)もまた、西洋型の低繊維・高糖質食に関連するとされ、発展途上国では極めて稀な疾患です。
これらの疾患は、腸内細菌叢の異常や粘膜免疫の過剰反応とも関連しており、予防や寛解維持においても食事の改善が求められています。[19]
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References
- Cordain L, et al. The Paleo Diet. J Am Nutr Assoc. 2002.
- Fass R, et al. Gastroesophageal reflux disease. Gastroenterol Clin N Am. 2014.
- Hunt JN, et al. The osmotic effects of sugar in gastric emptying. Gut. 1960.
- Cummings JH, et al. Dietary fiber and bowel transit. Gastroenterology. 1992.
- Burkitt DP, et al. Dietary fiber and the incidence of large bowel cancer. Lancet. 1971.
- Macfarlane GT, Macfarlane S. Fermentation in the human large intestine. J Clin Gastroenterol. 2011.
- Anderson JW, et al. Health benefits of dietary fiber. Nutr Rev. 2009.
- Bäckhed F, et al. Host-bacterial mutualism in the human intestine. Science. 2005.
- Bollinger RR, et al. Biofilms in the large bowel suggest an apparent function of the human vermiform appendix. J Theor Biol. 2007.
- Trowell H. Dietary fiber and coronary heart disease. Am J Clin Nutr. 1972.
- Bingham SA, et al. Dietary fibre in food and protection against colorectal cancer in the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition. Lancet. 2003.
- Sicherer SH, et al. Food allergy: Epidemiology, pathogenesis, diagnosis, and treatment. J Allergy Clin Immunol. 2010.
- Sapone A, et al. Spectrum of gluten-related disorders: consensus on new nomenclature and classification. BMC Med. 2012.
- Painter NS, Burkitt DP. Diverticular disease of the colon: a deficiency disease of Western civilization. BMJ. 1971.
- Trowell HC. Non-infective disease in Africa. Edward Arnold, 1960.
- Aldoori WH, et al. A prospective study of dietary fiber types and symptomatic diverticular disease in men. J Nutr. 1998.
- World Cancer Research Fund. Diet, Nutrition, Physical Activity and Colorectal Cancer. 2018.
- O’Keefe SJ, et al. Fiber and cancer risk. J Natl Cancer Inst. 2015.
- Ananthakrishnan AN. Environmental triggers for IBD. Curr Gastroenterol Rep. 2013.